32.日記 モヤモヤを受け入れる力:ネガティブ・ケイパビリティが教える、混沌を乗り越える知恵 

ネガティブ・ケイパビリティって何? イギリスの詩人が言い出した言葉

不確実性に耐える能力

ネガティブ・ケイパビリティとは、
ひとことで言うと、
「不確実性に耐える力」
のことです。

世の中では、
「モヤモヤに耐える力」
と言ったりします。
この説明は、わかりやすくて好きですね。

もともとは、
イギリスの詩人、ジョン・キーツが使い出した言葉です。

「ネガティブ・ケイパビリティとは
 性急に事実や理由を求めず、
 不確実さや、謎や、懐疑の中にありつづけること」

と、手紙の中で書いています。

高橋左

ジョン・キーツは1794年イギリス生まれ。日本でいうと江戸時代です。たった25才で亡くなった天才詩人です。私は学生時代、「くじびき」でキーツの授業を取らなければなりませんでした・・・難しかったです・・・その意味でも思い出に残る詩人です。

文学から、医療、さらにビジネスへと広がりつつある考え方

ネガティブ・ケイパビリティの考え方は
1817年にジョン・キーツが手紙の中で書いて以来
長い間、忘れられていました。

それがどうしたことか
再び取り上げられるときがきたのです。

取り上げたのは、イギリスの精神科医でした。

1970 年、
(つまり、ジョン・キーツが亡くなって、150年以上経ってから!!)
精神科医ビオンは
ネガティブ・ケイパビリティの大切さをとなえました。

つまり、

「(患者に対して)
不可思議さ、神秘、疑念を
そのまま持ち続け」

「事実や理由を
 性急に求めない態度」

が大事だというのです。

この考え方が、哲学にも影響を与えるようになりました。

さらに「先が見えない」と言われる現代においては
ビジネスの世界でも、重要な考え方だと言われるようになっています。

高橋左

相手のことを、急いで「こうだ」と決めつけない態度は、コーチングでもものすごく大事です(・・・と自分に言い聞かせている・・・)

現代社会におけるネガティブ・ケイパビリティの価値

混沌を受け入れ、深く考えることが大事になってきたらしい

この頃は、何でも「早くやるのがいい」という風潮があります。

問いがあったらすぐに答えを出す

ということが尊ばれます。

だから「これは、どうなっているのかな」と思ったら、
すぐにインターネットで検索して、
どこかに答えが転がってないか、と
一生懸命探すわけです。

確かに、もっともらしい答えもあります。

でも、ちょっと待って。
それは本当なんだろうか?
もっと深い意味があるんじゃないか?

と感じたら、
その答えを「うのみ」にできません。

そこで、目の前にある
「答え」にすぐに「食いつかず」に
ちょっとモヤモヤしたまま、
温めててみようよというよ、
というわけです。

高橋左

私はもともとネガティブケイパビリティの考え方は好きだったのですが、最近はビジネス領域でも、注目を浴び始めていると聞いて、非常に新鮮な気分です


ネガティブ・ケイパビリティが、
どういう時に役に立つかというと
やはり、時代が混沌としているときなんですね。

混沌とした、
先が見えない時代に役立つんです。

VUCAの時代とか、
最近はBANIとかいうのも出ているらしいですね。

変化が早い、先の見えない時代には
ビジネスをする上でも生きていく上でも、

「この、モヤモヤには、
 『ネガティブ・ケイパビリティ』と付箋を貼って、
 すぐに見極めようとするのをやめて、
 ちょっと横に置いておこう」

とするだけで、
「気持ちの余裕が出てくる」という人もいます

なおみん

ネガティブ・ケイパビリティって、「楽な感じ」がするところがいいね

無理のない自己成長にもつながる

ネガティブ・ケイパビリティは
仕事だけでなく、
自分自身にも使えます。

日々、流されて生きるだけでなく
一旦立ち止まって
自分自身に対して問いかけしてみて
そこから出てくるものを
「指針として扱う」必要が
あるんじゃないかと思っています。

しかし、
自分自身の「指針」は
そんなに簡単にでてこない。

そこで、
モヤモヤに耐える力としての
ネガティブ・ケイパビリティの
出番になります。

高橋左

コーチングでは、よく「事柄を扱うのか」それとも「クライアントその人自身を扱うのか」とよく問われるます。この分類でいうと「その人自身を扱う」方になります。

コーチングが上達すると、「事柄」だけなく、「クライアントのその人自身」の「ものの見方・考え方」そのものを扱えるようになろう、と言われます。

ですが、「ものの見方・考え方」を言葉で表現できるようになるには、時間が必要なんですよね。



「その人自身」の
「ものの見方・考え方・ふるまい方」と
言語化して、客観的に扱うには、
「慣れ」が必要です。

例えばヘルスコーチジャパンの講座で言えば
セルフマネジメントトレーニングと呼んでいるのですが、
セルフマネジメントができるようになるには、
3ヶ月では無理です。
早くても1年ぐらいかかります。

自分と向き合う作業は
そのぐらいの時間が必要です。

私だけじゃなく
多くの方が同じことを言います。

私が今、やっている
EQ自己探求というゼミでも
同じことです。

答えを急がず
じっくり自分と向き合うことによって
自分が取るべき指針を
ゆっくり時間をかけて
見出していこう、みたいな
考え方でやっているわけです。

「急がば回れ」ということなのです。

ネガティブ・ケイパビリティとよく似た言葉

エポケー: 判断を保留する哲学

私の知人に、絶妙なタイミングで
「それは、エポケーだな」
と言う人がいます。

ディスカッションで、
話の筋道が混乱してしてきたとき
「この話は、いったんワキに置こうよ」
と、提案するときに使うのです。

エポケーとはギリシャ語で
「中止」という意味です。

この言葉に対して、
フッサールという哲学者が

「何かについて判断を下すことを
いったん保留して、
ただ、その何かを観察しつづけよう

その方がかえって私たちは
その何かの「本質」に近づける」

と、意味付けしました。

これって、
ネガティブ・ケイパビリティに
似ていませんか?

問いを愛する: リルケの言葉

ネガティブ・ケイパビリティがなぜいいかというと
答えを急がないことによって
かえってより深い解答を得る、という体験を
私自身がしているからなのです。

私はネガティブ・ケイパビリティという言葉は
数年前まで知りませんでした。

そのかわり、学生時代に
リルケ(1875年-1926年)という、詩人が書いた、
次のような言葉に出会いました。

「問いを愛しなさい」そうすれば
「遠いある日、自分では気づかぬうちに、
 答えの中を生きているだろう」

当時の私には、
答えが出ない「人生の問い」があって
困っていたのですが、

リルケの言葉に出会って
「ああ、そいうものか」
と思うことができました。

そして、その「人生の問い」を
本当にワキに置くことにしたのです。

それから20年ぐらいたったでしょうか?
気がつけば、なんとなく
「答えの中を生きている」実感があったのです。

なおみん

20年って、長すぎるんだけど?


高橋右

まあね。
でも、ネガティブ・ケイパビリティと「問いを愛する」って
似ている気がするのよね

まとめ

ここでは、ネガティブケイパビリティって何?・・・から始まり、そして今日の社会での役立ち方、さらには他の考え方とどう結びつくのかを深掘りしました。詩から出発して、今や様々な業界で使われはじめているこの考え方は、今の不確かな時代において、私たちの成長や複雑な問題に取り組む新しいヒントを与えてくれます。


高橋左

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