33. オットー・ラスキー博士: アートからAI、そして成人発達理論まで、88歳の天才が切り開く新たな地平

多彩な才能と深い学識: オットー・ラスキー博士の本が、ついに日本で出版

88歳を超えてなお輝く、多才な学者の足跡

2024年早春、ついに
オットー・ラスキー博士の本が日本で出版されました。
私は、ラスキー博士の仕事に感銘を受け、
2022年から学んでいましたが
今回、本が出版された、この機会に、
博士の仕事について、書いてみることにしました。

ラスキー博士とZOOMで出会ったとき、
博士はすでに、86歳。
63歳で心理学の博士号を取得し、
64歳で、コーチングとコンサルテーションの協会を
立ち上げます。

それから、旺盛な
研究活動・論文執筆
本の出版があり
その中でも初期の本が
今回の出版物になります。

・・・とこのように書くと
遅咲きの方のように見えますが、
実は、その前の経歴も
すごいのです。

オットー・ラスキーは
1936 年ポーランド生まれ。

音楽好きの家族の中で育ち
後に自分も作曲家になり、
さらに音楽学の教授になります。

その他にも13歳から
詩を書いたり、
絵も描いたり。

また、芸術方面だけでなく、
哲学も学んで、
プラトンからヘーゲルにいたる
弁証法の研究で学位論文を書きます。

この間、
第二次世界大戦もあって、
ポーランドとかヨーロッパでの生活は
相当大変だったと思う・・・

さてその後、アメリカに渡って
音楽学の教授になります。

それにとどまらず
人工知能に興味を持って、
ソフトウェア技術者になったり、

さらにそこから、
心理学やコーチングに興味を持って
ハーバード教育大学院で
成人発達理論のロバート・キーガンのもとで
博士号を取得するのです。

高橋左

まるで、現代のレオナルド・ダビンチです〜

「人の器」は測れるのか?!: 隠された領域へのアプローチ

今回日本で出版された
『人の器を測るとはどういうことか』というタイトルですが、

原著の英語版のタイトルは
『人間の、目に見えない隠された領域を測る方法』
となっています。

なおみん

けど、「人の器」って測れるの?
「あの人は器が大きい」なんて言い方は、聞いたことあるけど


高橋左

ホンマのことを言ったら、
人の器なんか、測れないと私も思う。

けど、人の持っている「すごさ」とか「深さ」を
「うつわ」という言葉で
感覚的に表現しようとしたんやろね

ラスキー博士は、
ずっと、芸術、哲学や心理学
そして、AIに興味があったので、

人間の心や意識の発達は、
ある程度、説明できる!
と思ったのでしょう。

成人発達理論には、
構成主義発達理論という分野があり、
その中で、ラスキー博士は
世界でも
「ぶっちぎりの2トップ」の
成果を生み出している、と
評価されています。

(もう一つのトップは、
レクティカという団体のものです)

ラスキー博士の構成主義発達理論は、
3つの領域

1 社会的-感情的領域
2 欲求圧力分析
3. 認知領域

からできています。

この3つの領域をカバーすると
「人の器」の中の
いくらかは説明できるのかもしれません。

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今回の本に収められているのは、
3つのうちの2つ、

1 社会的-感情的領域
2 欲求圧力分析

になります。

3つ目の、認知領域は、
別の本になりますが、
こちらはまだ翻訳されていません。

今、ある読書会で、
3の、認知領域に
取り組んでいますが、
こちらもとても興味深い内容です。

高橋左

3つめの領域の本は、もっと分厚いです!
日本語訳は当分期待できないかも・・・

音読してわかった、博士の細やかで奥深い思想

翻訳者の加藤洋平さんは、
過去、この本のPDF版を紹介していました。

縁あって、そのPDFを読み、
とても強い印象を受けました。

私たちは、生きているかぎり、
さまざまな葛藤に出会いますが、
その葛藤がどんなメカニズムで起こるかが
くわしく書かれていて、
読みながら、ワクワクしたのを思い出します。

さらに、2年ほどたって、
とある読書会に誘っていただき

なんと、この本を
「隅から隅まで、ずいい〜っと音読!」
したのです。

音読は強烈です。

ある人が言っていました。

「黙読は知識になるが、
 音読は体験になる」

黙読でも十分面白かった内容を
音読したときの驚きを
何にたとえたら良いのでしょう。。

一言でいうと
「全部、言葉で書いてある!」
「省略も飛躍もなく、全部、説明されている!」
ということへの驚きでした。

私にとってのラスキー博士

いちばん印象的だったやりとり

加藤洋平さんのPDF版の本読んで、
強い印象を受けた私は、
ラスキー博士の講座を受けることにしました。

そんな中での博士とのやり取りで
一番印象に残っているのは

行動を重視するコーチングと
発達を重視するコーチングとは
まったく異なる動物なのです

by ラスキー博士

最初の感想は

高橋左

ええっ、コーチングを「動物」にたとえるんだ!!

コーチングの世界は、いろんな動物が住む、サバンナなのか?!

でした・・・。

確かに私が属する、世界最大のコーチング組織ICFは
行動変容つまり、人の行動が変わることを重視するコーチングをします。

高橋左

けれど、ICFも行動だけをあつかうコーチングじゃないんだけどな〜

人を行動へと追い立てるコーチングは
「首しめコーチング」と呼んでいて

それはICFのコーチングじゃないんだけどな〜

というような疑問が
ふつふつとわいてきました。

そんなわけで発達コーチングの土台となる
ラスキー博士の著書を、
英語でもなんでも、
ガシガシと勉強することにしたのです。

コーチとしての自己発見: ICFコーチングを振り返る

ラスキー博士の理論を学んで
気づいたことは2つあります。

まず、コーチは、相手が話す内容と同じぐらい
相手の話の背景にある
ものの見方、とらえ方に
意識を向けます。

なおみん

相手のもの見方、とらえ方を聞くって難しくない?


高橋左

そうね〜、だから最初はトレーニングが必要だけど、
これができるようになると、
自分と全く違う世界に住んでいる人のコーチングができるようになるんよ

もちろん、ICFのコーチングも
相手の「ものの見方・とらえ方」を重視します。

ここを意識できないと、
ICFのプロフェッショナル・コーチとは言えません。

ですが、ラスキー博士の発達コーチングは、
この「ものの見方・とらえ方」を
「成人の発達」と「認知の発達」という視点から
幅広くそして、精緻にコーチングを展開するのです。

高橋左

この幅広さ、精緻さが、ラスキー博士の発達コーチングの特徴やね〜

ICFのコーチングでは「ものの見方・とらえ方」を具体的にどう扱うは、
個々のコーチに委ねられているからね〜

2つ目に気づいたことは、
私にとっても相当な衝撃でした。

それは、「ICFのコア・コンピテンシー」をどうとらえるか、という
コーチとしての姿勢に関わることです。

まず「ICFのコア・コンピテンシー」とは、
成果を出しているコーチが共通して持っている能力をあつめたものです。

ICFの資格を得ようとするコーチ、
ICFの資格を持つコーチはみんな

この「ICFのコア・コンピテンシー」を重視します。
これを重視して、コーチトレーニングをすると
みなさま、コーチングの腕が
どんどんアップします。

高橋左

もちろん、私も重視しています。
だから、ICFのコアコンピテンシーのアンバサダー活動もしています。

でも・・・でもですよ。

ラスキー博士の理論をしっかり学ぶと、
「ICFのコア・コンピテンシー」ですら
ある種の「ものの見方・とらえ方」の枠という
制限に中にあることに
気づいてしまうのです・・・。

「ICFのコア・コンピテンシー」にも
ある種の限界があると
認識していることは
とても大事な態度だと私は考えます。

だからこそ、ICFも
2019年にコアコンピテンシーを大改訂しましたし、
これからも5年ごとに
コンピテンシーの内容を検討する、と発表しています。

高橋左

このことを、今回の書籍の監修者にお伝えしたところ
書籍の124ページで追記していただけました

これで、ICFのコーチたちも、
心穏やかにこの本を読むことができるのではないかと
思っています。


なおみん

そういうとこ、なんやろな、
一言いわないと、気が済まない性格・・・

「スーパーエイジャー」としての博士

ところで、
「スーパーエイジャー」という言葉をご存知ですか?

スーパーエイジャーとは
「実年齢より少なくとも30歳若い人の記憶能力を持つ80歳以上の人々」
のことで、

アメリカ・ノースウェスタン大学が
作り出した言葉です。

ラスキー博士は、
まさにこの「スーパーエイジャー」だな、と
つくづく思います。

なぜなら、何かで連絡を取るたびに

「今、これこれの講座をやっているから、
ぜひ、参加して。

参加しないと、
私の理論の真髄はわからない。

博士論文は書けるかもしれないけどね」

という元気いっぱいのメッセージを
いただくからです。

まとめ:オットーラスキー博士の世界への誘い: 「人の器を測る」ことの深淵へ

ここでは、オットー・ラスキー博士の多岐にわたる業績を、コーチングを中心に紹介しました。

実のところ、ラスキー博士の理論だけでなく、生い立ちから現在にいたるまでの活動全体が、人間の「目に見えない領域」を探求することに、貢献していることを示しています。

また、私自身が、ラスキー博士から受けた影響と、それが自身のコーチング実践にどのように活かされていくかについても触れました。

分厚い本ですが、とても丁寧に書かれていて「途中で迷子にはならない」本です。

対人支援に、新しく、また、応用のきく視点を取り入れたい方におすすめです。

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高橋左

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