6.自分らしく生きるには、まず自分を知ることから〜自分の「無意識のバイアス」が何でできているのか探求しよう

今回のテーマは「無意識のバイアス」です。

まず、私の体験談からはじめますね。



長男が小学1年生だったころ、バービー人形が欲しいと言われて、慌てたことがあります。

当時、アメリカに住んでいて、毎日行くスーパーにバービー人形が売っていたのです。

「バービーじゃなくて、ケンではダメ?」

と聞きましたが、ケンでは駄目だったのです。

長男に「バービー人形が欲しい」と言われて、なぜ、私はあわてたのか

今日のテーマは、
なぜ、私が長男に「バービー人形が欲しい」と言われて、慌てたのか、ということに関係があります。

ここで、一冊の本をご紹介します。
「ゆさぶる:無意識のバイアスができるしくみを解きあかす」
というタイトルです。
(原題:SWAY, Unravelling unconscious bias)

高橋右

バイアスは「傾き」「斜め」という意味です。「無意識のバイアス」というと、無意識に持つ、ものの捉え方の「かたより」や「傾向性」という意味になります。

無意識のバイアスが強くなると、偏見につながったり、間違った判断につながったりして、周囲に強い影響を与えます



私たちは、誰でも、
「自分は平等主義者で、
 バイアスなど持っていない」
と思いたがっているし、
私もそう思いたいです。

けれども、実際には、
「どんな人の中にも
 無意識のバイアスがあるのだ」
と言われたら、どんな気持ちになりますか?


きっといい気持ちじゃないですよね。

私も、正直、楽しくはないです。

けれども、実際は、

私たちの外側にはバイアスがあり、
そして、内側にもバイアスがあります。



そして、この外側と内側のバイアスを
知っているのと、知らないのとでは、
あなた自身の人生が変わってきます。

この本は、そんなことを探求する、
興味深い本なのです。


もし、あなたが

・より良い人生を歩みたい
・大切な人により良い人生を送ってほしい
・よりよいコーチになりたい

というのであれば
(読者さんにはコーチもいらっしゃいます)

この本は「必読」です。

なぜなら、
よりよい人生のためには、
よりよい「意思決定」をしたいですよね。
人生は「意思決定の連続」だからです。

そして、よりよい「意思決定」のためには
自分の「無意識のバイアス」・・・

言い換えると
「無意識の思考傾向」を
知る必要があるからです。

また、あなたがコーチなら、
クライアントのためにも
「オープンで柔軟性のある思考・態度を開発し続ける」必要があるからです。
(コーチの皆様、国際コーチング連盟(世界最大のコーチング団体)のコア・コンピテンシーをご確認ください)



そのためには、自分や相手が持つ無意識に
自覚的になる必要があるのです。

この本『ゆさぶる:無意識のバイアスを解きほぐす』をインテグラル理論でマッピングすると

インテグラル理論的に、この本の位置付けを考えてみます。

まず、四象限の視点。



自分の内側を扱うので、左上象限。
同時に、文化を扱うので、左下象限。

本の著者は、元データ・サイエンティストなので、論文や根拠もいっぱい、だから右上象限。

では、どうすればいいのか、という「しくみ」については、ページ数の関係で「扱えなかった」と書いているので、右下象限はあまりありません。

(そのかわり、著者は、このテーマでTEDを開催するなど、活発に右下象限活動をしています)



私が、インテグラル理論の
四象限を意識する理由は

四象限の視点から見ると、
全体をバランスよく見渡せるからです。

全体を見渡せるようになると、
たとえば、うまくいかないときに
ちょっと視点をずらしたり、
別の視点をみつけたり
しやすくなります。


インテグラル理論の四象限、
新しい視点を見つけるのに
便利ですよ。


意識の段階としては、オレンジからグリーンの要素が中心になると思います。
科学的なデータを根拠にしているので、
合理主義的オレンジ段階。

同時に、平等という観点から
多様なあり方を認めようとしているので
グリーン段階の要素があるとみています。

(インテグラル理論の『意識の段階』についてはあらためて書きますが、このあたりを詳しく知りたい方は『入門インテグラル理論』などをどうぞ!)

この本を紹介する私の裏事情

この本をご紹介する、裏事情としては、
まず私自身が、とても興味を感じて
海外で開催されるコーチの読書会に
つい、申し込んでしまった、
といういきさつがあります。

とはいえ本は英語で、
内容もちょっとハードなので、
(英語ネイティブにも投げ出す人あり)
面白そうな所だけ、かいつまんで紹介します。


(そのうち、誰か翻訳してくれないかな。
 英文そのものは、難しくないのですよ〜)


つまり、予習です。

よろしかったら、私の予習にお付き合いくださいませ。

著者は、インド系科学者・著述家・母親

私がこの本にひかれた理由は、著者のプロフィールにもあります。

著者の名前は、
プラギャ・アガワル(Pragya Agarwal)
・・・うう、耳慣れない、名前です。

インド出身です。

高橋右

プラギャという言葉には、ヒンディー語で「知恵」という意味があります。

だから、プラギャさんとは、インドでは「知恵子さん」の感じなんでしょうね。

少し、名前が身近になりました。

彼女は行動科学者であり、データ・サイエンティストでした。

のちに、著述家なっています。2人の女の子の母親です。

彼女はインドに生まれ
家父長制の強い
(つまり、お父さんがとても威張っている)
文化の中で、大いに「反抗的に」育ちました。

イギリスに渡り、工学博士を取得。

イギリスに住んで20年。
周囲に溶け込もうと必死に努力をしました。
英語のなまりを無くし、
イギリス人のジョークも、
理解できるようになりました。

高橋右

外国に住んで困るのは、ジョークがわからないことなんです。

だから、「インドの知恵子さん」は相当、努力されたんだとおもいます。





ある日、周囲から、
「全然インド人に見えないね」と言われ
彼女は、あれっ、と思いました。

「私は喜んでいいのか? もしかすると、
 侮辱されているのではないだろうか?」

これが、彼女が「無意識のバイアス」について
研究を始め、この本を書くきっかけになったそうです。


脳科学で説明する、無意識のバイアスができる理由

少し前に、

私たちは、誰でも、
「自分は平等主義者で、
 バイアスなど持っていない」
と思いたがっている。

けれども、実際には、
「どんな人の中にも無意識のバイアスがある」のです。



と書きました。

無意識のバイアスは、人間が生き残るために必要だった

しかし、無意識のバイアスは、人間が生き残るために必要な選択の結果、でもあるのです。

研究結果によると、私たちの脳の情報処理速度は、毎秒11,000,000ビットです。
このうち、意識的にあつかえるのは、たったの40~50 ビットだといわれています。

つまり、脳の中のほとんどの情報処理は、無意識におこなわれる、ということなんですね。

無意識の情報処理を「直感」という

一方、私たちには「直感」がありますね。「なんとなく、こう思う」という、感覚です。

どんなにするどい直感も、著者は「直感は、魔法ではないし、天から降りてくるものでもない」といいます。「これまでの経験の積み重ね」だというのです。

直感は生きていくのに欠かせないもの

合理的判断だけでは、私たちは生きられません。時間がないときなど特にそうです。

過去にこんな実験があったそうです。病気のため「合理的にしか考えられなくなった人」に「2種類のシリアルから、どちらかを選ぶ課題」をやってもらったところ、結論を出すのに数時間かかった、というものです。

たから、直感的に判断することは、とても大事なのです。

しかし、直感に間違いはつきもの

直感は、生きていくのに欠かせないものですが、同時に、直感に、間違いはつきものです。

たとえば、私たちは、素早く判断するために、目の前にある情報のごく一部だけを取り上げ、あとは捨てる、ということをするからです。

有名な例として、「透明ゴリラ」の実験があります。


このビデオでは、課題が出されます。「白い服を着た人たちが、パスを何回すのか数えてください」この課題に正解する人は多いのですが、一方である事実を見落とす人が多い、というものです。

さらに、プラギャさん自身が行った、こんなプチ実験もあります。
動画「BBCインタビューに子供乱入(2017)」についての実験です。


プチ実験では、乱入した子供たちを、部屋から連れ出した女性を、どういう人だと思ったか、という質問をしました。すると回答者の7割が「ベビーシッター」と答えました。正解は「妻」だったのです。

大事なことを決めるときは「直感」と「合理性」の両方が必要

私たちに欠かせない「直感」には、どうしても無意識のバイアスが混ざります。バイアス自体には、良いも悪いもなく「ただ、そういうもの」です。しかし放置された無意識のバイアスのうち、有害なものが強くなると、偏見や間違った判断につながります。

なので、大事なことは決めるときは「直感」も使うけれど、そこに「無意識のバイアスがないか」と合理的にチェックすることをおすすめします。

自分の無意識のバイアスを言語化してみた

「無意識のバイアス」がないか、チェックしてみて、と書くからには、「自分はどうなんだ?」と、まず自分に引き寄せて考えないとね、と私は考えました。

しかも、誰もが「無意識のバイアス」を持っているということですから、私も安心して、自分の場合を考えてみることにしたのです。

相手の中に無意識のバイアスを感じた体験

私の2年間のアメリカ生活は、楽しくもあったけれど、うっすらと偏見を感じる日々でもありました。

たとえば、子供の保育園を探すとき、電話帳で調べて手当たり次第に電話をかけたのですが、
私の英語は、もちろんへたで日本人特有のなまりもあるので、電話口の向こうの人は、はっきりと表現しないにせよ、心のどこかで「何この人、、、」と思っているのが伝わってきたものです。

人は、バイアスがある目で見られるとそれを敏感に感じとるものだ、と実感した体験でした。

(ちなみに、保育園選びは、電話対応が一番丁寧だった保育園に決めました。この選択は正解でした)

そしてバービー事件。自分の中に無意識のバイアスを感じた体験。

これは、なかなか言語化するのが難しかったです。

なぜなら、誰もが「自分は平等主義者で、心はオープンだし、バイアスなんてない」と思いたいものだ、とプラギャさんは書いているし、実際、私もその通りだからです。

ですが、2〜3日たって、やっとひとつ思い出しました。

長男が小学1年生だったころ、バービー人形が欲しいと言われて、慌てたことがあります。

当時、アメリカに住んでいて、毎日行くスーパーにバービー人形が売っていたのです。

「バービーじゃなくて、ケンではダメ?」

と聞きましたが、ケンでは駄目だったのです。

結局、バービー人形を買いました。

「男の子にバービー人形はダメ」というのはバイアスだな、考え直したからです。

「うちの息子は将来、高田ケンゾーになるのかも…」なんて、ある意味、親バカなことを思いながら、です。

ところで、これには後日談があります。

日本に帰ってきしばらくたったころ。

長男の友達が、何人か家に遊びに来ました。

そのうちの1人がおもちゃ箱から、アメリカで私が長男に買ったバービー人形を発見したのです。


その友達がいいました。

「なんで、こんな人形があるの?」

そのとき、長男はこう言ったのです

「あ、それ、お母さんの人形だし」


もう、お分かりだと思いますが、

長男自身の中に「男子は、バービー人形で遊ぶものではない」というバイアスが生まれていて

とっさに友達にウソをついたのです。


・・・このようにして、男は男に生まれるのではなく、男になるのだ、と思った瞬間でした。

あなたの場合はいかがですか?

ここまでのまとめ

よりよい人生を送りたい人、あなたの大切な人によりよい人生を送ってほしい人に、この本『ゆさぶる:無意識のバイアスを解きほぐす』は役にたちます。 誰もが無意識のバイアスを持っています。


脳科学では、無意識のバイアスは、人間が生き残るときに、かならず生まれるものといいます。 「直感」は、無意識な情報処理の結果ですが、無意識な情報処理は同時に無意識のバイアスを作るからです。 直感は生きていくのに欠かせないものですが、同時に、直感に、偏見や間違いはつきものなのです。

だから大事なことを決めるときは「直感」と「合理性」の両方を意識することが必要です。

そのためにも、無意識のバイアスに、注意を向けることをおススメします。

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