attention span of goldfish

2016年の秋、「人間の集中力はどんどん短くなっていて、今や金魚より短い」説が、一世を風靡しました。

なおみんなおみん

そんなの知らんわ

タカハシタカハシ

マインドフルネス界ではちょっとしたブームだったのよ

アメリカでは、「タイム」「テレグラフ」「ガーディアン」「USA トゥデイ」「ニューヨーク・タイムズ」など、数々の有名紙で取り上げられました。

日本でも私の知る限り、全国紙、ビジネス誌、ラジオなどで何度も紹介されていました。

私も、これは面白いデータだと、セミナーで紹介したところ、参加者から

参加者さんA

金魚の集中力ってどうやって測定するんですか?

との質問をいただきました。

それもそうだと「原著論文を調べてお返事します」と答えたのが、意外な結果につながったのです。

なおみんなおみん

意外ってどんな?

タカハシタカハシ

実は、そんなデータはどこにも無かったんよ

なおみんなおみん

えーっ、だってそれだけマスコミで紹介されたのに、ウソやった、てこと?

タカハシタカハシ

そういうことやねん。

当時の私も全力で調べましたが、あるところから先へ進めなくなりました。当時の調査の様子は、下のブログに書いてあります。


すると、このブログ記事は多くの方に読まれているようで、「参考になりました」と丁寧なお礼のコメントをくださる方までありました。

私はグーグル発のマインドフルネスを紹介しているので、いい加減なことはお伝えしたくありません

根拠になる論文は出来る限り調べた上でいろいろな記事をお伝えしています。

そこで、3年後、改めて「人の集中力が金魚より短い問題」について調べると、このことについて徹底的に調べた論文が発表されていたのでご紹介します!

なおみんなおみん

パンパカパーン!

「人間の集中力が8秒しか続かず、金魚より短い」は結局ウソかホントか?


世界には、人の集中力について研究している人がたくさんいますが、どの研究者も、この「集中力が8秒問題」がどこから出てきたのか不思議だったそうです。

そして、2017年、ついにイギリスのBBCが、徹底的に調べました。

さすがBBCは私が追いきれなかったところまで調べ上げました。ですが、根拠となる論文をどこにも見出すことはできなったのです。

そこで「人間の集中力が8秒しか続かず、金魚より短い説」は 根拠なし! ということになりました。

「マイクロソフト・カナダが言ってるんだから、間違いないだろう」と、どのメディアも、よく調べもせず、うのみにしてしまった、ということですね。

なおみんなおみん

金魚の集中力なんて、アホな話やと思ってたわ。何でもうのみにしたらアカンな!

タカハシタカハシ

でもな、私もはじめは「うのみ」にしてたんやわ。だって、タイムやら、ビジネス誌とかに載ってたんやもん

そもそも「人間の集中力が〇秒」とい考え方には意味がない

メディアは「人間の集中力の長さが8秒」と騒ぎました。

しかし「人間の集中力が〇秒」とい考え自体に意味がない、、、これが、研究者の意見です。

なぜなら、人の集中力の長さは、何をしているかによっても変わるからです。例えば、好きなことをしているときと、嫌いなことをしているときでは、集中できる時間が変ってきます。そんなときに「集中力の長さ(アテンション・スパン)」の平均値にどれほどの意味があるというのでしょうか?

一部の研究者は、ある決まった作業についての集中力の持続時間を測ることも難しいと言っています。

とはいえ、大人自身は「集中力が落ちている」と感じている

そうは言っても、現在、多くの大人が「集中し続けるのは大変だ」と感じているようです。

私たちの生活をちょっと振り返ってみましょう。

たとえば、テレビ。画面に出る一行文(テロップ)ですべて理解しようとしていませんか?

たとえば、ブログ記事。文字がびっちり並ぶより、画像があったり動画がある方を好きではないでしょうか?

それからリンク。リンクが一杯ついていてよりいろいろな興味深い情報にアクセスできることが嬉しくないでしょうか?

さらに、スマホを見ているうちに、どんどん小さな窓が開き(ポップアップ)、「あ、メールが来た」「ラインがきた!」「コメントが付いた!」などと、つい、そちらを見にいくことはないでしょうか?

なおみんなおみん

全部、私のことや!

ある研究によると、18歳から24歳のスマホの所有者は

77%・・・退屈したら、とりあえずスマホを触る
52%・・・少なくとも30分に1回はスマホをチェックする
79%・・・テレビを見ながらスマホを触る


のだそうです。

あなたはいかがですか?

タカハシタカハシ

どれも身に覚えがある・・・

今どきの子供たちの集中力は?

一方、生まれたときからスマホなどのIT機器になじんでいる、いわゆる”デジタル・ネイティブ”といわれる今の子供たちはどうなんでしょうか?

さぞ集中力が落ちているだろうと思うかもしれませんが、実は彼らの集中力は、何時間も続くこともわかっています。

ただし、それには、一定の条件があって、子供たちが「これは、自分に関係があって、取り組む価値がある」と思い、さらに十分な時間と空間が与えられた場合に限るそうです。

現実には、子供たちは、日々過密なスケジュールに追われているので、「自分にとって価値あること」を十分に時間をかけて探求することは、なかなか難しいようです。

子供たちが、長く集中した経験がないとすれば、それは子供を育てている「忙しい大人」の事情がそうさせているのかも知れません。

この調査から私が学んだことは

「人間の集中力は金魚以下?!」問題を調べていて私が学んだことは、この説が結局正しいのか間違っているのか以外にもあります。

私たちの「思考」は浅くなっていて、しかも、そのことに気づいている?

さきほど私たちの生活を振り返ってみました。

テレビ画面に出る一行文(テロップ)。ブログ記事では文字がびっちり並ぶより、画像があったり動画がある方が好まれる。リンクから興味深い情報にアクセスしたい。どんどん小さな窓が開いて(ポップアップ)「あ、メールが来た」「ラインがきた!」と常にさまざまな情報が来る・・・

これらはすべて人から「深い思考力をうばう」ことが研究でわかってきています。

しかも、私たちは、すでにそのことに気づいているのではないか、と思うのです。最近のIT技術の進化はすさまじいものがあります。スマホはどんどん高性能化し、量子コンピューターも開発され、私たちは、日々、文字通り大量の情報の海の中にいるのです。

中には、あまりに急激な変化に、そこはかとない不安や恐怖を感じている人もあるかも知れません。

だから「人間の集中力は8秒で金魚以下?!」というキャッチ・コピーに思わず心うばわれてしまうのではないでしょうか?

誤った科学が広がってしまう理由

人々が「人間の集中力は8秒で金魚以下?!」という誤った神話に、私も含めて、振り回された理由はほかにもあると思います。

それは、人は「うっかり引用をしてしまう」性質がある、ということです。そして、その「うっかり引用」を「タイム」のような影響力のある媒体がやってしまうと、「ああ、あの有名な『タイム』さんが引用しているんだから、間違いない!」と思ってしまうのです。

一方、良識ある人はどうでしょう?「これは変だ」と疑いを持ち、調査したとします。そして 「人間の集中力は8秒で金魚以下?!」に、根拠がない、とわかったら、「そのことについて沈黙する」のです。

特に今回は、もとになる論文が探せないわけですから、研究者としては、コメントすることもできません。

このようにして、「キャッチーな内容」を「うっかり引用」した記事だけが、再生産され、しぶとく生き残ってしまうのです。

人は間違う。でも修正できる

今回の調査で、いちばん嬉しかったのは、「人には修正する力がある」と分かったことです。

たとえ、多くの有力紙がつぎつぎと紹介し、多くの人が(私も含めて)これを「うのみ」にした中で、しっかりした論文の形で「これは誤った神話である」という主張をした人があったということです。

今回「人間の集中力は8秒で金魚以下?!」問題に対して、論文で「ウソ判定」をしたのは、インドの経営学者、スブラマニアン博士でした。「集中力が8秒かどうか」はもとより、このことが話題になるハイテク情報化社会で、私たちがどんな態度でいるべきかを論文で示しています。客観性をできるだけ保つため、集中力に関する論文をたくさん集め、分類し、考察の素材としました。

このように、研究の世界では、過去の論文を複数調べて、それらの論文に対する考察をすることがあります。これを「メタアナリシス」といいます。

この「メタアナリシス」のおかげで、現在発表されいている論文がどのぐらい妥当で信頼できるのか、私たちはあらためて知ることができるのです。

このように、人は確かに「まちがう」のですが、「修正もできる」能力とシステムを持っているのです。

まとめとしてオススメしたいこと

「人間の集中力は8秒で金魚以下」という説には、根拠がないことが示されました。このことは、記事の真偽というだけでなく、人の知性について深く考えるきっかけになりました。

私たちの知性にはさまざまな種類があります。スピーディーで多くの情報をつかむ知性、時間を忘れてゆっくり深く探求していく知性、間違いや他の視点を調べて修正する知性など、いろいろあります。

私たちが、もともと持っている多様な知性の良さを最大限に使うためにも、スマホを触らない時間や、じっくり何かに没頭する時間、何もせず自分を落ち整える時間、この3つの時間を意識して持つことをオススメします。

参考文献

1) Subramanian, K. R. (2018), ‘Myth and Mystery of Shrinking Attention Span’ International Journal of Trend in Research and Development, Volume 5(3), ISSN: 2394-9333

2) Carr, Nicholas (2010), ‘The Web Shatters Focus, Rewires Brains’, wired.com

3) BBC (2017), ‘The Attention Span of a Goldfish’ https://www.bbc.co.uk/sounds/play/p04vlq5r

4) Jon Brock(2019) ,Careless citations don’t just spread scientific myths – they can make them stronger, nature index

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講師:高橋美佐

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